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サンディエゴで宝石採掘! ~OceanView & Pala Chief Mine~

サンディエゴといえばやっぱりビーチのイメージがありますよね。

ところが、サンディエゴは北アメリカ大陸でも最も活動的な地質をもつため、それによって生成した数々の資源、特に美しい宝石の名産地でもあるんです。

サンディエゴ近郊、もっというと、アメリカ西部には花崗岩が多く分布します。花崗岩はマグマが地下深部でゆっくりと冷えて固まった岩石です。

マグマが冷えて固まるとき、ゆっくりと固まると鉱物の結晶が大きくなります。塩の結晶を想像してみてください。ゆっくり冷やすととても大きく美しい結晶になります。

こうして固まっていくとき、結晶になりやすいものから結晶になっていき、最後に残った部分に空洞ができ、そこに最後に残った物質が結晶化します。

このとき温度などのある条件を満たすと巨大な結晶となります。これを巨晶花崗岩(ペグマタイト)といいます。さらに化学的条件を満たすと、巨大で美しい鉱物の結晶が生成し、これが宝石になるんです。

サンディエゴ近郊の山をいくつか歩きましたが、そこらじゅうにペグマタイトがあります。それこそ日本の鉱物マニアがよだれを垂らして混乱するくらい無尽蔵にあります。そのため、開拓者たちがそれを見て宝石を探そうとしたのも想像に難くありません。

OceanView & Pala Chief Mine はその中でも歴史が古く、1903年ごろから操業を始めたといいます。そのほかにも、最盛期には70以上の鉱山がサンディエゴ近郊にあったそうです。

残念なことに、ほとんどの鉱山は夢の跡と化し、一般人がアクセスできる鉱山はほんのわずかです。OceanView & Pala Chief Mine は所有者が変わり、当時のような商業採掘は行っていませんが、一般向けに採掘体験を提供している貴重な鉱山です。

採取できる鉱物は、トルマリンやベリルや水晶ですが、トパーズも過去に一度だけ産出したようです。トルマリンはブルー、イエロー、グリーン、ピンク、バイカラー、などさまざまな色が産出するようです。また、赤いガーネットも採取できます。なお、宝石としては扱われませんが、大きな白雲母や結晶のきれいな長石も採取することができます。

この2つの鉱山は厳密には別の鉱山ですが、ほぼ同じ場所にあるので同じと捉えてもかまいません。

今回はこの鉱山で宝石採掘をしてきましたので、予約の仕方などから体験記を書いていきたいと思います。

場所

サンディエゴのダウンタウンからは車で約1時間、インターステート15を北上し、カリフォルニア76号を東へ進んで、少し進んだところを左折して山道に入るとあります。4駆の車も必要なく、普通のファミリーカーで行けます。

ただし、必ず予約が必要なので、当日訪れるだけでは採掘できません!

予約方法

まずは、採掘体験を提供している会社のサイトにアクセスします。

DigForGems のページ

下の方に「The OceanView Mine」と「Pala Chief Mine」のバナーがあるのでクリックします。

上に書いたように、この2つの鉱山は厳密には違う鉱山ですが、場所がほとんど同じで体験内容も同じなため、どちらでもいいと思います。

2021年11月現在、OceanView Mine は木土日、Pala Chief Mine は日曜のみの営業です。

クリックすると、ページ下部にカレンダーが出るため、予約可能日をクリックし、必要事項を記入して送信すればOKです。ちなみに、料金は【現地にて現金払いのみ】です。

すると、予約確認メールともに、PDFフォームをダウンロードするよう促されます。

読むとわかると思いますが、「絶対に全部読め!」「絶対に全部読んで理解しろ!!」としつこく書いてあるので、読んで理解しましょう。DEEPLにコピペして訳せばOKです。

書いてある内容は至極まっとうなもので、採掘を快適に公平に楽しむために必要なことが必要最低限の説明で書いてあります。

誓約書に必要事項とサインをして、現金$75とともに当日もっていきましょう。

当日の流れ

当日は「時間を守れ!!」としつこく書いてあるのでちょっと早めに行きます。

説明通り(google map でも正確に到着可)に現地に行くと、オレンジ畑を通り過ぎたあたりで左手に「Dig For Gem」などといった小さな看板が見えます。

看板通りに左折してオフロードを進むと、ゲートの前でおじさんが待っています。だだし、集合時間の30分前くらいからしかおじさんが出現しないので早く着きすぎた場合はどこかで時間をつぶしてください。

おじさんに名前を告げ、誓約書と現金を渡すと、先に進むよう促されます。

そして、ダートの坂道を上ると鉱山に到着です。

到着すると順番に案内され、自分用の作業用テーブルがあてがわれて、説明が行われます。

作業は参加者が揃った後に、全員に向けてデモンストレーションを行った後に開始されるので、それまでにショップやトイレなどすませておきましょう。

全員揃うとデモンストレーションが開始されます。

円形に作業用テーブルが並んでいます。1テーブル当たり2人割り当てられます。

デモンストレーションを見ると一目瞭然ですが、テーブルに囲まれて真ん中にある砂と石の山から、砂と石をショベルで備え付けのバケツに移し、それを木枠のふるいに投入していらない泥や砂を除去していく作業になります。

いらない泥や砂を除去すると、いろんな形や色をした石が姿を現します。

ここから、目を皿のようにして目的の鉱物を見つけます。宝石は、他のとは違って濃い色をしていたり、ピカッと光ったりするので見つけやすいでしょう。

作業の様子はだいたいこんな感じです。みなさん黙々とひたすら砂を取り、ふるいがけを繰り返しております。

今回の作業時間は10時から14時過ぎまででしたが、みなさん食事もとらず、本当に黙々とひたすら砂を処理しておりました。

いい結晶を見つけるコツは?

みなさんの採取物を見ていると、今回もっともいいものを見つけたのは、はやぶさだと思います。これまで様々な場所で地質調査をしてて鉱物を採取してきた経験が生きているんでしょう。ここで、いい結晶を見つける、はやぶさなりのコツを書いておきます。

  1. 指~こぶし半分くらいの大きさの石の多い部分を狙ってショベルですくう。
    ・・・場所としては、砂と石の山の根本よりちょっと上くらいの部分が良いと思います。なぜかというと、いい結晶はこのくらいの大きさのものが多いからです。ショベルですくいやすいからといって、細かい砂ばかりの部分を狙ってもいい結晶は得られませんし、逆に大きな石ばかりのところを狙っても大きな石しか採れません。
  2. ひたすら数と量をこなす。
    ・・・いい結晶が取れるかどうかは、ある程度コツはあるにしても、結局は確率の問題です。たくさん処理すればするほどいい結晶を得られる可能性は高まります。

鉱山ショートツアー

ところで、希望者には作業中に鉱山ショートツアーに参加できます。小さなカートに乗って説明を聞きながら、かつての夢の跡を巡ることができます。

運が良ければ坑道内部を少し案内してくれます。坑道に入るとすぐに少しヒヤッとした空気とともに、頭が入るくらいの穴がいくつも現れます。足元に目を移すと、雲母の反射で地面がキラキラと煌めきます。100年前の開拓と興奮の時代にタイムスリップしたかのようです。この穴はかつて、色とりどりの輝く美しい結晶で埋め尽くされていたといいます。穴が初めて開いて、そこに初めて光をかざしたときの興奮はどのようなものだったんでしょうね。

採れた宝石は?

さて、今回の収穫はこちらです。手元にいい機材がなく、写真がきれいでないのはご容赦ください。

鉱物としては、上段真ん中の赤茶色のガーネット(柘榴石)を除き、すべてトルマリン(電気石)です。

今回一番きれいな結晶は、中段左から2番目のグリーントルマリンです。長さは約1.5 cmと小さいながらも、手にして見るとトルマリン結晶独特の面がきらきらと輝き、内部は透明で濃淡のある美しい濃緑色で、光にかざすと内部にある亀裂に光が反射してきらきらと煌めきます。

個人的なお気に入りは、一番下にあるブルートルマリンです。光に透かして見ると、カリフォルニアのビーチのようなさわやかなマリンブルーから、深海を思わせる神秘的なディープブルーまでのグラデーションが美しいです。そのままペンダントなどにしたいですね。

黒い不透明な電気石(一番左のようなもの)は、この鉱山だけでなくサンディエゴ近郊で非常に多く産出し、道路脇にころがっていたりします。しかし、緑や青、ピンクといったものは非常に稀で、元素としてリチウムを含むペグマタイトによく産出します。

日本でも一応は産出しますが、今回のように宝石にできるほどの結晶が一日の作業で一般人が採掘できる場所は、世界中探してもほとんどないでしょう。

サンディエゴ近郊には最近まで何か所かこうした体験を提供していた鉱山があったようですが、COVID-19パンデミックのせいもあり、いくつかは営業をやめてしまいました。

この鉱山も将来的にはどうなるかわかりません。

このように、一般人がアクセスできて、しかも採掘できる鉱山は世界でも数えるほどしかないと思います。もしサンディエゴに来た際には、ぜひレンタカーを借りて、多くの人に訪れていただきたいと思います。

そして、こうした貴重な体験ができる場所が長く続き、あるいは、もっと増えてくれることを願います。