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眞鍋淑郎博士のノーベル物理学賞受賞に思うこと2~日本とアメリカの違い:お金の面から~

留学経験などほとんどないにもかかわらず偉そうに語ってみようと思いますが、ノーベル賞を受賞した眞鍋博士のおっしゃったアメリカと日本の研究環境の違いについて、まずは”お金と設備”の話をしてみようと思います。

ただしこれは分野や研究者の経験によると思います。ここでは、地球科学分野にいる経験の浅い研究者の一個人の状況を、あくまで一例としてまとめてみようと思います。

Summary

  • 私を取り巻く研究資金・設備環境は日本の方が圧倒的によい。
  • ある分野のある研究にとって、研究資金・設備環境は、時代と分野に左右される。
  • 環境が変わるのを待つのではなく、自ら環境をうまく利用するか、環境を変えればよい。

私の状況~日本の所属先と留学先の違い~

眞鍋博士は、アメリカではコンピューターをお金のことを気にせず好きなだけ使うことができた、とおっしゃいました。また、こうしたニュースを受けて、日本では基礎研究や好奇心に動かされた研究へもっと投資を、研究への投資が減らされている現状をなんとか、という声が聞かれました。

では私の現時点での状況はどうでしょうか。

<日本の所属先や共同研究先など>

  • 個人研究用の消耗品や少額備品では使いきれない程度の資金
  • 1台1000万円から1億円を超える高度な分析器にすぐにアクセス可能&使用制限ほぼなし
  • 数億円を超えるような分析器も、伝手を使えば特に大きな壁もなく使用可能
  • 研究しきれないほどの膨大な量の研究試料

<留学先>

  • 日常では困らない程度だが、研究を拡大するには足りない程度の資金(ホスト教授談)
  • 数十万円の顕微鏡数台
  • 高度な分析器も伝手を作れば使用できると思われるが、台数、種類ともに少ない
  • 研究しきれないほどの膨大な量の研究試料

実は留学する前からわかっていたことですが、はっきり言って、資金と設備という観点からは日本の所属先の方がはるかに環境が良いです。

そして運が良いことに、私は自分のやりたい研究がほぼ自由にできています。ぶっちゃけると海外に行く必要などありません。

アメリカの研究資金状況~留学先の例~

実はお金に関しては、ホストの教授が面白いことを言っていました。

「アメリカでは研究への政府の投資額は膨大であるが、分野が偏っている」とのこと。

特に、医療・製薬業界と軍への投資がすさまじいらしいです。一方で地球科学業界、それも産業には直結しない生物学などの分野の研究資金は乏しいとのこと。

なるほど、国ごとの研究開発費の絶対値の大小で比較することはあまり現実に即しておらず、分野ごと、あるいは時代ごとに状況は異なることを念頭に置かなければならないんですね。

ここで、眞鍋博士のいた分野の当時の状況について、自分なりの推理をしてみると、眞鍋博士がアメリカに渡った1960~1970年代は、冷戦の真っただ中であり、核開発、航空宇宙開発などでコンピュータの力が大いに発揮され始めた時代であると読めます。おそらく軍事上や航空宇宙産業上も、海流シミュレーションや大気シミュレーションなど、地球システムの理解は重要度を増していったでしょう。

おそらくですが、そのためにかなり大きな資金がコンピュータ地球科学分野に投入されたのではないでしょうか。そして、眞鍋博士がやりたかったことと素晴らしい業績・実績、アメリカの研究者・研究業界がやりたかったこと・やってほしかったことが、バッチリ一致した、ということではないでしょうか。

結局、アメリカと日本はどちらが優れた環境か?

資金・設備的に、結局どちらが優れているかは、私には決められません。

私の場合、研究内容が今現在という時代の日本と合っているため、この場所が実はバッチリはまっています。

結局のところ、研究者一個人としては、自分に合っている、自分のやりたいことがやりたいようにできる環境に自ら進んで身を置くか、それができるように現在の環境をうまく利用するしかありません。

そのために自分ができることは、そういう時代が来る、そういう環境が来る、あるいはそういう時代・環境を自ら作り出すために、自分にしかできない、圧倒的な研究成果を挙げること、でしょうか。

はい、今自分で書いたことを自分ではできていないと思います・・・これを決意にして研究に邁進していこうと思います。